君と夢見るエクスプレス

滝野原駅のホームに着いたら驚いた。
一本早い電車に乗るつもりだったのに、さらにもう一本早い電車に余裕で乗れそうな時間。



やれば、できるじゃない。
自分で自分を褒めておこう。



ふうっと、ひと息吐いた肩に触れた優しい重み。体の芯が跳ね上がる。



「おはよう、陽香里」



振り向いたら、眩しい笑顔。
名前なんか呼ばれたから、必要以上に体が震えてしまう。



だって、体がまだ覚えている。
彼の手、彼の腕、彼の唇、感触をすべて。



土曜日の食事の後、私たちは体を重ねた。そのまま橘さんの部屋で一夜を明かして。



成り行きには違いないけれど、決して軽い気持ちではなかった。



彼は私に再会できた喜びを込めて、丁寧に慈しむように抱いてくれた。



私も彼に身を委ねたかったし、彼は私に話してくれた。大学卒業後に海外で生活していた時のことや、駅員になってからの様々な出来事を。



だから私も、かつて描いていた夢や入社してからの厳しい現実を話して。途中で何度も愚痴っぽくなってしまっても、彼は嫌な顔もせず優しく頷いてくれる。



それだけで、十分嬉しかった。





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