君と夢見るエクスプレス

焦点を合わせないようにとぼやかした視界の中に、覚束ない彼の輪郭。目を輝かせて、口元の辺りに白いものが覗いてるのがわかる。



「すみません、こちらの方は松浦さんというのですか? 同じプロジェクトのメンバーの方ですよね?」



呆れるような彼の問いに、思わず脱力しそうになる。



いやいや、そんなことは聞かなくてもわかるじゃない。何を今更、わかりきったことを聞いてるの? じゃあ何のために、私はここに居ると思ってんの?



悶々と渦巻く腹立たしさと情けなさ。
やっぱり、こんな人と一緒に仕事なんてできない。



姫野さん、お願いします。
ガツンと言ってやってください。



「そういえば紹介してませんでしたね、申し訳ない」
「はい、姫野さんはよくわかりましたが、松浦さんとはまだ一言も話していないので」
「松浦陽香里さん、四月からローテーションで企画開発室に異動して来られた方です。主に姫野君のサポートをしてもらっています」



笠子主任に促されて、軽く一礼。



どうして笠子主任が謝らなきゃいけないのか。なんだか納得いかない気持ちが、もやもやと胸の中を巡ってる。




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