君と夢見るエクスプレス

「松浦です、よろしくお願いします」



顔を上げたら彼の顔。きらきらと輝く瞳に吸い寄せられるように、彼と目が合ってしまった。



怖くなかったから、ほっとした。和やかな表情をしているけど、笠子主任ほど柔らかなじゃない。



すると、彼は満面の笑みで立ち上がる。



「橘航です、こちらこそよろしくお願いします」



弾むような声で、右手を差し伸べた。



もしや、それは握手ということでしょうか?



戸惑いつつ助けを求めた笠子主任は、小さく頷くだけ。柔らかな表情が、彼の挨拶を受け入れるようにと告げている。



これって、セクハラに当たりませんか?



疑問を感じたけれど仕方ない。
渋々、私も手を伸ばした。



彼の手に触れるか触れないかの寸前、彼に手を強く引かれた。ぎゅうっと力強く握り締められて、少し痛く感じるほど。



すぐさま訴えようとした笠子主任は、キングファイルに視線を落として知らん顔。ぱらぱらとページを捲る音とともに、



「では今日は、簡単にプロジェクトの概要を説明と、今後の展望を大まかに話しましょうか」



と、独り言のように呟いた。
私たちの方なんて見てもくれない。






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