君と夢見るエクスプレス
10. 誰だって、いいじゃない

翌日、橘さんと顔を合わせないようにと早めに家を出た。二本早い電車で出勤した先週の月曜日よりも一時間早く。



これで、絶対に会うことはないはず。



滝野原駅へ向かう途中、何度か振り向いたけど彼らしき姿はない。道を歩く人も車道を走る車も、いつもより少なくて気持ちよく感じられる。



早起きって、いいかも。
だけど、何か物足りない。



スマホを家に置いてきてしまったからから?



昨夜、橘さんからメールが届いた。
一応は謝罪の言葉は見られたけど、すんなりと受け入れられるはずはない。



彼は嘘をついていたことについて、一切触れていなかったから。あくまでも出勤してるつもりの彼の文面に、腹が立ってしまった。



だから、返信するのをやめた。



何にも見なかったことにして、適当に話を合わせて返信してもよかったんだけど。私の変なプライドが邪魔をしてた、というか自分の中で気持ちの整理ができなくて。



もう少しだけ、頭を冷やす時間がほしい。



それまでは、橘さんと顔を合わせたくない。


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