君と夢見るエクスプレス
午前中、会議の途中で一時休憩。私は資料のコピーを頼まれて、事務所へと戻ってきた。
出席者全員分の資料をコピーするのは時間が掛かる。資料を待っている間、皆は休憩してるけど私はそんなわけにはいかない。
コピー機の排出トレイへとリズミカルに繰り出される資料を、ぼーっと眺めていると勢いよく事務所のドアが開いた。
橘さんだ。
怖い顔で事務所を見回した後、まっすぐ私の方へと向かってくる。今にも駆け出しそうな勢いに、逃げ出したくなる。
だけど、逃げる場所なんてあるわけがない。
あっという間にやって来た彼は、僅かに息を切らせている。険しい表情が緩んで、安堵の色が浮かんだ。
「昨日はごめん、今朝は早かったの?」
予想通りの問いかけに、言葉を選ぶ必要もない。彼から逸らした視線を排出トレイへと移して、口を開く。
「うん、仕事が残ってたから早く来たの」
「そうか……、携帯は忘れたの? 何度か掛けたんだけど出なかったから」
「うん、家に忘れてきた」
意識しなくても、自然と素っ気ない返事になってしまう。