君と夢見るエクスプレス
「退いてくれないと、大声出しますよ?」
あくまでも強気で言い放ち、後頭部に回した手を払い退けた。
はずなのに、払い退けようとした私の手は彼に握られている。握っているのは、さっきまで私の後頭部にあった彼の手。
ぐいと持ち上げられて、簡単に壁に押し付けられてしまった。
もしや、これは非常にヤバい状況。
「離して! こんなことして、どうなるかわかってるんですか?」
「ううん、離さない」
全く意に介さない軽い口調。
笑みを浮かべた彼が、もう片方の手を伸ばす。
必死の抵抗も虚しく、反対の手も掴まれて絶体絶命。こうなったら、大声で叫んで助けを呼ぶしかない。
と思った瞬間、彼の顔が迫ってきた。
「約束してくれる? 今朝の件、絶対に誰にも話さないと。わかるよね?」
「何言ってるんですか? いいから、退いてください」
こんな状況で今朝の事を話すななんて、まるで脅迫。こんなことで簡単に屈してしまうのは、私のプライドが絶対に許さない。
それに今朝のことは、お昼休みのネタにしようと思っているんだから。
邪魔されてなるものか。