君と夢見るエクスプレス
もしかしたら、橘さんが駅に居るかもしれない。今朝駅で待っていてくれたみたいに、帰りも待っていてくれるかもしれない。
根拠のない僅かな期待を抱きながら電車に乗り、滝野原駅で降りた。駅から自宅まで徒歩で帰る途中で、周りを気にしたけど彼の姿はない。
背後から近づいてくる足音に、胸を弾ませて振り向いた。
だけど、彼の姿はどこにもない。
私の家の前で待っていてくれたら……
最後に期待してみたけれど、彼を見つけることなんてできなかった。
もちろん家の中は真っ暗。合鍵なんて渡していないから、家の中に入れるはずないでしょう。って、自分でツッコミしてバカみたい。
真っ暗な部屋の中、ベッドの上に小さな灯りが点滅してる。
私の携帯電話。
部屋の照明を点けて、すぐに取り上げた。
今朝一番に彼の着信。それから数回続いた彼の着信と留守電、定時前には美波からの着信とメール。
気持ちを落ち着かせようと、大きく息を吐いた。それから、彼からの留守電に耳を傾ける。