君と夢見るエクスプレス
苛立ちの混じった第一声は、今朝電車を待っている時のものだろう。
想像した通りの声、声から思い浮かんでくる彼の顔。
胸の奥から熱いものが込み上げてきて、涙腺を刺激する。堪えようと唇を噛んだけど、視界が滲んでくる。
彼の声が聴きたい。
彼に、触れたい。
とうに留守電は切れてしまって、彼の声は聴こえない。それでもまだ、耳の奥で彼の声が残響して離れない。
あの時、嘘なんて吐くんじゃなかった。
会いたかったと、素直に言えばよかった。
もう二度と会えないわけじゃないのに、後悔と悲しみが止まらない。
付き合ってなんて言ってくれなくてもいいから、仕事だと嘘を吐いててもいいから。彼が誰だっていいから、今すぐ会いたい。
握り締めた携帯電話が、ぶるっと震えた。
鼓動が大きく跳ね上がる。
次々と押し寄せていた熱い思いを、ぎゅうっと掴まれたような感覚。
そっと視線を落としたら、ディスプレイには彼の名前が映ってる。
息を整えながら、ゆっくりとカウント。
着信ボタンを指で触れた。