君と夢見るエクスプレス
ようやく彼が離れた時には、頬が火照ってしまっていた。見られるのが恥ずかしくて顔を伏せていると、彼が私の前髪をかき上げて。
そっと見上げたら、おでこに軽くキスを落としてくれた。
「じゃあ、行ってくるよ」
ふわりと微笑む彼に、しがみつきたくなる衝動がうずいてる。
「行ってらっしゃい、頑張ってね」
これから仕事なんだから、引き止めちゃいけない。うずうずしてしまう思いを抑えて、精いっぱい微笑み返した。
「ありがとう、今度の金曜は会える?」
「うん、仕事終わってから。橘さんは仕事?」
「休暇だよ、今度こそ大丈夫だから」
「わかった、信じてる」
何度も振り返りながら、彼が駅へと向かって歩いていく。遠ざかっていく彼を見送っていると、せつなくなる。
でも我慢。
金曜日には会えるんだから。
それまで、余計なことは話さない。
彼が話してくれるまで、私は何にも言わないと決めた。