君と夢見るエクスプレス

「あのね、阿藤さんに告られちゃった」



掠れそうな声で、美波が言った。



顔を真っ赤に染めて、箸を握り締めたまま。逆に私は、箸を落としそうになってしまった。



「え? ちょっと待って、いつ?」
「昨日、午後から外回りした時に……」



ためらいがちな美波の言葉に、疑問が浮かぶ。



阿藤さんとは二人きりで外回りしてるのに、なかなかアプローチしてくれないと言っていたんじゃなかった?



だから、合コンに参加するんだと言ってたのに。どうして急にくっついてしまってるの?



「どうして? だって、合コン行くんじゃなかったの?」
「そう、それね……、朝イチに鶴井先輩に断ったの、行く必要なくなったし」
「ごめん、意味わからない……、どこで?」
「以前に、茜口の駅北のケーキ屋さんに行ったでしょ? あそこでね、阿藤さんに言われたの」



先日のことが思い出される。



日曜日、姫野さんと阿藤さんに会ったケーキ屋さん。阿藤さんは姫野さんを残して、先に帰ってしまったんだ。



「おめでとう、美波の方がすごいよ」



私はまだ、付き合おうとも言われてないのに。






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