君と夢見るエクスプレス
落とさないうちに素早くかぶりつく。
仕出しのお弁当だから衣はしっとりしてしまっているけれど、ぷりっぷりのエビの食感が口の中いっぱいに広がる。
この上なく幸せな気分に、強張っていた顔の筋肉が緩んでいく。
「陽香里は本当に幸せそうに食べるね、今日の宴会はどこ?」
「うん、海老好(えびよし)。だから仕方なく参加することにしたの」
海老好は宮代駅北側にある海老料理専門店。駅から徒歩五分ほどの距離だし、駅南のここからでも歩いて七、八分もあれば着く。
それに大好きな海老づくしのコースだというから渋々ながら参加することを決めた。そうでなければ、月曜日に宴会なんて絶対に参加するものか。
「へえ、よかったじゃない。お店を選んだのは誰?」
「たぶん姫野さんだと思う。みんなに出欠を聞いて回ってたし」
「ふうん、やっぱりそうか。姫野さんってマメだよね」
美波が口元に笑みを浮かべて、意味深に頷く。
美波は姫野さんと直接話したことはないけれど、私が時々ネタにしているから知っている。
それに姫野さんがローテーション前に居た部署が、美波が配属された広報課だから。広報課のメンバーから、姫野さんのことを聞く機会もあるらしい。
至って真面目だと、評価は高い。