君と夢見るエクスプレス
ゆるりと口角を上げて迫ってくる彼の顔。鼻先と鼻先が触れ合った時に感じた息遣いと微かに漏れたミントの香り。
口の中に入れたポテトサラダを噛まずに呑み込んでしまって、慌ててお茶で流し込んだ。
「どうだったのって……、べつにどうってことは……」
「大丈夫? 姫野さんは彼のこと、受け入れたの?」
「ああ、姫野さんね」
不覚にもうろたえてしまった自分が恥ずかしい。
美波が『どうだったの?』なんて尋ねるから、てっきり彼のことと勘違いしそうになったじゃない。
「それで? 姫野さんは彼とどんな感じだったの?」
テーブルに肘をつき、ぐいと身を乗り出した美波は興味津々。
「もちろん、険悪に決まってるでしょう。あの姫野さんがすんなりと受け入れるはずないじゃない」
「やっぱり? 新しく加わるんだもんね……、そりゃあ厳しくもなるよ」
ふんふんと頷いて、美波は納得の表情。
姫野さんが厳しいのは彼に限ったことじゃない。これまでも打合せに参加したメンバーだけでなく、同じ企画開発室のメンバーと激しく討論しているところを見てきた。