君と夢見るエクスプレス
私が企画開発室に配属されて間もない頃、いきなり打合せに連れて行かれたことがあった。その際に強い口調で話す姫野さんに驚いたし、正直言って怖かった。
姫野さんは、中途半端な理論や曲がったことが大嫌い。
だけど私には厳しいことを言わず、丁寧に指導してくれる。
きっと女性だからと、遠慮している部分もあるのだろう。
だったら同等の仕事を割り振ってもらわなくてもいいし、打合せに連れて行ってもらわなくてもいいんだけど。
「笠子主任は優しいのになあ……、打合せも出なくていいよって言ってくれるし」
「またそんなこと言ってる……、いつまでも補助業務じゃ悲しくない?」
「だって、今の部署に行きたくて行ったわけじゃないもん。私は運転士になりたかったのに……」
美波が呆れたと言いたげに、大きな溜め息を吐いた。またか……と顔に書いてある。
しまった、と思ったけど時すでに遅し。
「この会社じゃ無理。女性は乗務員になれないの。わかった? 今の仕事を楽しむことを考えた方が上だよ?」
入社時から何度も聞いてきた言葉。
美波からだけではなく、いろんな人から聞いてきた現実。
私だって、よくわかってる。