君と夢見るエクスプレス
「だけど、図書館は市が建てるものだから。霞駅に市立の図書館があるしね」
私の回答に、美波がにこりと笑ってくれた。
「あるけどね、子供に読み聞かせするスペースが狭くて、本を借りたらすぐに連れて帰るだけだって」
「じゃあ、図書館じゃなくても子供が遊べるような場所だったらいいってことだよね?」
「うん、そうだよ。だったらアミューズメント系かなあ……」
『アミューズメント』と聞いたら、思い出した。以前の打ち合わせで、姫野さんが『アミューズメントだけではダメだ』と力説していたことを。
「だめだめ、地元から反対が出てるらしいから。駅前のマンション組合や自治体がうるさいみたい」
茜口駅前には、数年前に開発された高層マンション街がある。その中の一軒に、美波のお兄さん家族も住んでいる。
マンション街の隣りには、不況の波が訪れる前に開発された住宅街。当時は高級住宅街と呼ばれていたためか、住人達は高級志向でプライドが高い。
「交通量が増えるし、住宅街の中を抜け道に使われるから?」
「そう、違法駐車も増えるし、街全体の雰囲気が悪くなるって」
ふんふん、と美波と頷き合っているとガラス扉が開いた。