君と夢見るエクスプレス

入ってきたのは姫野さん。
何処と無く表情が険しいと思ったら、姫野さんの後から橘さんが続いてる。



二人は紙カップを手に、休憩室を見回した。私たちが頭を下げると、姫野さんがふわりと表情を緩ませる。



とりあえず私は、彼と視線を合わせないように気をつけなければ。



「お疲れ様、今日の弁当は何?」
「エビフライです」



姫野さんが、お弁当を覗き込む。返した私たちの声が、思いがけずハモってしまって恥ずかしい。



仕出し屋さんの配達してくれるお弁当の、今日のメインはエビフライが二尾。最後の楽しみに残しておいた一尾を見て、姫野さんがはっとした顔をする。



「ごめん、今日の歓迎会も海老なのに……、弁当のメニューわかってたら避けたのになあ」



やっぱり、歓迎会のお店を決めたのは姫野さんだったらしい。お弁当のエビフライと海老づくしが被ったことに気づいて、申し訳なさそう。



「いいえ、気にしないでください。海老は好きなので嬉しいぐらいですから」
「そう? 本当に?」
「はい、大好きです」



はっきりと答えた瞬間、姫野さんの表情が固まった。


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