君と夢見るエクスプレス
きょとんとしたまま、言葉を探すように口元を微かに震わせる。姫野さんらしくない戸惑った表情。
私、何か悪いことを言った?
こんな時、どんな言葉を掛ければいいのだろう。
「姫野さん、陽香里なら大丈夫ですよ。海老づくし、楽しみだって話してたところですから」
妙な空気を払拭するように、美波がきっぱりと笑顔で返した。
空気が軽くなって、姫野さんの表情も一変する。きゅっと唇を結んで口角を上げて、さっき私たちを見つけた時と同じ表情。
「よかった……、好きならよかったよ」
ほっとする姫野さんの声を聞いて、私も安心した。
「俺も好きですよ、海老」
和やかな雰囲気に、ぽんっと投げ掛けられた彼の声。
なんとなく、冷めた口調に聴こえた。自分のことを忘れるなと、主張しているように。
だって姫野さんの後ろにいた彼は、完全に置いてけぼりになっていたから。
「そう、よかったよ。海老好は行ったことある?」
「いいえ、美味しいんですか?」
「美味いよ、海老が好きなら喜んでもらえると思うよ」
「やった、楽しみにしてます」
姫野さんと橘さんの会話を聴きながら、美波は首を傾げて見せた。