君と夢見るエクスプレス
4. 姫野さんは心配症
茜口駅南口から出ると、まず高架下に並んだファストフード店が目に留まる。
高架と並走する片側二車線の幹線道路は比較的交通量が多く、タクシー乗り場に停めきれなくなったタクシーがちらほらと溢れ出しているのがわかる。
溢れたタクシーは駅前の交差点を渡った角のホテル周辺にも列を成し、ホテルの隣りの緑色のフェンス沿いはまるでタクシー乗り場。
「行こうか、今日はホテルから現地を通って、次の交差点にできた家電屋の辺りを散策しよう」
と言って、姫野さんは颯爽と歩きだす。
ちょうど交差点の信号機が青に変わったところ、私も急いでついて行く。
交差点を渡ったホテルの前には、空車のタクシーがずらりと停まっている。数人のビジネスマンが一台に乗り込んでいるけれど、他に待っている客はいない。
どうやらタクシーは余り気味のようだ。
タクシーの数に気を取られていると、姫野さんが振り向いた。
「タクシーが溢れてる、ほとんどがビジネス客目当てだろうけど厳しそうだな」
「駅前だからタクシーを利用する必要はないから、ですよね?」
「それもあるけど、臨海地区の企業へ行くにはタクシーの方が便利だろう?」
確かに姫野さんの言う通りだ。