君と夢見るエクスプレス
まだ昼食を摂るには時間が早いからか、店内は空いている。おかげでテーブル席に案内してもらうことができた。
実は一人暮らしを始めてから、回転寿司屋さんへはあまり行くことがない。
友人と行くこともないし。
行くとしたら居酒屋さんか洋食屋さんなどを選ぶから、回転寿司屋さんは選択肢には入らない。
いまいち手順がわからないと思う間もなく、さっさと姫野さんはお茶を淹れてくれたり、おしぼりを渡してくれたり。
先輩なのに気を遣ってもらって、なんだか申し訳なくなる。
「海老、結構種類があるよ、注文しようか?」
「ありがとうございます、お願いします」
何気なく答えたけれど、あれ? 何か変だと気がついた。
やっぱり、海老に納まってる?
いや、むしろ海老に拘っているのは姫野さん?
「チーズとかアボカドは食べられる? 海老フライの巻きずしもあるけど?」
「はい、食べれます。大好きです」
すると、タッチパネルを操作していた姫野さんの手が止まった。画面が固まってしまったからではなくて、止まっているのは姫野さんの手。
そして、姫野さんの顔も固まってる。