君と夢見るエクスプレス

ああ、やっぱり。
単なる私の自意識過剰だったのかもしれない。



「すみませんでした」
「謝らなくてもいいから……、とりあえず松浦さんは気をつけてほしい。いい?」
「はい、わかりました」



核心に近づいた予感を確かめようかと迷っているうちに、本題に戻されてしまう。



今はもう、確かめようとするのはやめよう。これ以上、話が変な方向に進んでしまったら困る。



とりあえず、触らぬ神に祟りなしということで。
お茶を啜って、息を吐いた。



視線を感じて顔を上げたら、入り口付近にたむろしているお客さんが店内を見回している。全然知っている人ではないけれど、多少苛立っている様子。



いつの間にか、店内はお客さんで溢れ返っている。
姫野さんが腕時計を確認する。



「そろそろ行こうか、お腹はいっぱいになった?」
「はい、もう十分です」
「よかった」



と言って、会計ボタンを押した。
よく見ると、テーブルに積み上げた空のお皿は姫野さんよりも私の方が高かった。



< 92 / 257 >

この作品をシェア

pagetop