君と夢見るエクスプレス
5. 笠子主任の誘惑
幸か不幸か、一週間を予定していた姫野さんとの外回りは翌日から中止となった。
急に舞い込んだ所内会議により、業務が慌ただしくなったため。ほとんどが他部門との情報の擦り合わせ。
外回りは来週以降に、業務の様子を見ながら再開しようかということに。元々、外回りは急を要するものでもなかったから。
おかげで水曜日から金曜日までの三日間、一日のほぼ半分を会議に費やすこととなった。
当然、私も姫野さんの補助として慌ただしくなる。会議資料の作成から、姫野さんと一緒に会議に駆り出されたり。
と言っても、会議で専ら発言するのは姫野さん。私は隣りで議論を聴きながらメモを取るだけ。とくに発言を求められることはないけれど、それがまた苦痛でもある。
昼一からの会議は特に、眠気との戦い。寝不足でなくても、昼食後の満腹感が眠気を誘発させる。
熱く議論を交わす姫野さんの声でさえ子守唄。
息を吐く暇もないほど会議と資料作成に追われる毎日、退社は十時を過ぎてしまう。
これじゃあ、良いのか悪いのかわからない。