君と夢見るエクスプレス

やっと迎えた金曜日。
お昼休みが唯一、心休まる時……
のはずなのに、美波と昼食を摂るのは三日ぶり。



火曜日は外回りで姫野さんと一緒。水曜日と木曜日は午前中の会議が長引いたから、昼休み後にひとりでお弁当を食べたんだ。



休憩室で、美波と仕出し屋さんのお弁当を頂く。こうして、いつも通りの昼休みを過ごせる幸せを噛み締めながら。



今日のお弁当のメインはチキン南蛮。だけど私は、副菜のピリ辛きんぴらごぼうが好き。いつもよりご飯が進んでしまうのは、ピリッと口に残る辛さのせいかな。



「陽香里、かなり溜まってそうだね」
「ん? そうかな?」
「うん、ストレスで食欲増進してるっぽいよ?」



がっついてる私に、美波がぴしゃりと一言。



そう言われるとそうかもしれない。
ピリ辛きんぴらごぼうのせいではなかったようだ。



「だって、立て続けだもん……、これなら外出してる方がいいかも」
「でしょう? やっと外回りの楽しさに気づいた?」
「うん、気づいた」
「外は自由でいいでしょう?」
「うん、自由がいい」



得意げな顔で笑う美波が、心から羨ましい。今の仕事が楽しい、満足してるって感じが滲み出ている。




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