恋に落ちて。





―――――ぽろり。



ツ――――
と涙が一筋流れ、頬を濡らした。




「なっ、泣いてんのかよ!」



私に声をかけた少年は私の頬をつたう涙を見て、焦ったように慌てた。


私はハッとして、急いで浴衣の袖で涙を拭う。ごしごしごしごし。目が、少し痛い。



(泣きたくなんか、ないのに…)



そう思ってるのに、拭っても拭っても次から次へと溢れてくる涙。涙は、枯れることを知らないんだ。




「なんで、泣いてんだよ」

「、」




あどけない顔をした少年は私に尋ねる。きっと、私と同じくらいの年。


「おい」

「…」



だけど私は、だんまりを決め込むようにして口を閉ざす。それどころじゃない。涙が止まらないのだから。


浴衣の袖が、どんどん濡れていく。


黒アゲハのような色の浴衣が、だんだん、闇夜の空のような色へと変わっていくのがわかる。



はぁ。
と、彼がため息をついたのが聞こえた。




(なんで私なんかに構うの)



そう思った瞬間、



――――――バーン。




星空に、華が、咲いた。


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