恋に落ちて。
「ここ…」
「泣きやんだな」
少年はそう言って、
「ここ穴場なんだ」
と、付け足した。
暗い夜道を抜けた先には、綺麗な華が目線の先いっぱいに広がっていた。
緑の華。
黄色の華。
赤の華。
青の華。
白の華。
色とりどりの華が、目の前でたくさん咲く。
それから少年は私の足を見て、自分のポケットからハンカチを出してキツめにそれを私の足に巻き付けた。
たぶん、下駄のせいで足が赤くなっていることに気づいたんだと思う。
「お前、名前は?」
少年が私に問う。
私はその問に、浴衣の袖口をギュッと掴んで静かに口を開いた。
「私は、」
自分の声が、闇夜に静かに沈んでいくようで。
バーン。
花火の音が、鼓膜に響く。
それと同時に、
「亜美ー」
私の名前を呼ぶ声が、耳に届く。