【短編】よわ虫kiss
そして、そのまま…
「…っ…」
大和の唇が、あたしの唇を覆った。
大和のキスは…すごく丁寧。
上手いんだか、下手なんだかはよく分かんないけど…
優しくて、深くて、熱くて…
される度に、腰が砕けそうになるのを必死で止める。
声がもれそうになるのを必死で抑える。
だけど、大和はそんなあたしをお見通しで…
それが悔しい。
思わずギュッと大和のユニフォームを掴んだあたしに気付いて、大和がその手を上から握り締めた。
大和の優しい仕草に、あたしの閉じた目尻に薄く涙が滲んだ。
キスなんて…
こんなキスなんて…しないでよ。
これ以上思い出を、増やしたくないから。
忘れられない事を、これ以上増やしたくないから。
体中で溢れるくらいに記憶している大和を、これ以上増やしたくないから―――…
大和…
あたしが転校するって言ったら…
どうする?
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