【短編】よわ虫kiss
そういえば、昨日もあまりいい球入ってなかったっけ。
…いっちょまえにスランプとか?
今まで何でも器用にこなしてきただけに、大和の不調が気になったけど…
部活が終わって笑いかけてくる笑顔はいつもと一緒に見えて、とりあえず安心した。
「今日もボール磨くわけ?
おまえもよく飽きずに毎日毎日ボールなんか…」
「誰かさんが神経質すぎてボールの縫い目にまで文句言うからでしょ」
「あぁ…そっか、誰かさんがそんな事言ってたっけ」
「そうだよ、誰かさん」
「はは(笑)
おまえ、それ誤魔化してる意味ないし」
大和がまた素振りを始めたから、あたしは手の中にある皮のボールから視線を外した。
そして、大和のスイングを眺める。
アッパーじゃない、叩きつけるタイプのスイング。
ヒット狙いのホームランは狙えないスイング。
大和のユニフォーム姿を眺めてると、つくづく思う。
かっこいいなって。
…好きだなって。
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