【短編】よわ虫kiss
なに?この気持ち。
…ああ、そっか。
あたしがあまのじゃくだからか。
もう、思い出を増やしたくないって思った途端に、必要以上に大和を目で追っちゃうのも
もう、言えないんだなって思った途端に、素直に気持ちを言いたくなっちゃうのも…
好きだとか
離れたくないとか
ずっと一緒にいたいとか…
そんな絶対に言いたくない言葉が口を付きそうになっちゃうのも…
あたしの性格のせいか。
ちっとも可愛くない、あたしの性格のせいなんだ。
見つめすぎたのか、大和があたしに気付いて振り向いた。
でもそのまま見つめ続けていると…
大和がにって優しい笑顔で笑った。
ぎゅうっと喉の辺りが苦しくなって、それに連動して瞼が熱くなったのに気付いて、あたしは手元のボールを磨く振りをした。
そんなあたしに少し視線を置いた後、大和がまた素振りを始める。
ビュンビュンと空を切る音が、やけに胸に響いてしまった。
ねぇ、大和…
あたし転校するんだよ。
言ったら、大和はどうする…?
ねぇ、大和…
あたし達に別れがくるなんて…想像できてた?
あたしは…考えた事もなかったよ。
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