【短編】よわ虫kiss
「100回とかでばてないでよ。
期待のエースなら300回くらい余裕でやりなよ」
「20回が限度のおまえに言われたくないね。
ってゆうか、オレが本気出せば800は余裕だな」
「本当にそんなにできるなら野球よりも向いてる事があるんじゃないの?」
あー…また…
嫌なのに…大和の言葉に自然と言葉が口をつく。
今こんな会話したから、きっと筋トレとか腹筋の話題が出る度に大和を思い出すんだ。
雨の日の廊下を通る度に大和を思い出すんだ。
もうこれ以上、大和の思い出増やしたくないのに…
あたしはそんな思いを吐き出すように、大きな息を吐いた。
そして、腕立てを始めた大和を見つめる。
ふわふわなネコッ毛が、あたしの胸を締め付けた。
今、目の前にいるのにね。
こんな近くにいて、触れるのにね…
もう…3ヶ月後には…
あたしの視界から、大和が消える。
大和の視界から、あたしが消える。
信じられないけど…本当の話。
もしかしたら…なんていう仮定の話なんかじゃなくて…
絶対に来る、近い未来。
だったら…
これ以上の思い出なんて、あたしは欲しくない。
…欲しくない。
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