【短編】よわ虫kiss
「オレ、こんなだけど浮気とかした事ないよ?
…アヤしか想ってないよ」
…知ってるよ。
そんなの、知ってる。
「…じゃあ、大和のモテるところが嫌になった」
「『じゃあ』ってなんだよ。
それに、それはオレのせいじゃない。
…アヤ、嘘つくなよ。
おまえの嘘くらいすぐ分かる。
何年一緒にいたと思うんだよ」
「じゃあ大和には耐えられる?!」
あたしの声に、大和は少し驚いた表情を浮かべてた。
外の雨の音が、興奮した頭に遠く聞こえる。
「大和には遠恋なんかできないでしょ?!
1人が嫌いで、寂しがりやで、よわ虫で…そんな大和に遠恋ができる訳ないじゃん!
…そっちこそ何年一緒にいると思ってんの?」
大和の言葉に口を開いたら、言葉が止まらなかった。
溢れ出す言葉が、大和を責めてた。
手の甲に落ちてきた水滴に気付いて、自分が泣いていた事に初めて気付く。
あたしが涙を手の甲で拭いてから顔を上げると、大和は真剣な顔をしていて…
往生際の悪いあたしの胸がきゅうっと締め付けられる。
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