【短編】よわ虫kiss
涙でよく見えない目で大和を強く見つめて…睨みつけて部室を出た。
外に出ると土砂降りの雨があたしを迎え入れたけど、そんな雨も気にしないで、大和から逃げるように走った。
大和の声から
明るい笑顔から
マメのできた暖かい手から
大和の存在から
大和の全部から逃げるように走った。
あたしの今までの過去、全てに絡みついた大和をふるい落とせるわけないのに…
記憶から消すなんてできるわけないのに…
逃げて、逃げて…
さんざん走ってから、息が切れて立ち止まった。
雨でよかった。
校庭には誰もいないし、涙もこれなら誰にもばれない。
…赤い目は、コンタクトが合わない事にでもすれば大丈夫だし。
無理矢理思考を曲げてそんな事を思ってみても、やっぱり気持ちは元の場所に戻ってしまう。
本当は誰かにばれる事なんか気にしてない。
気になるのは…大和の事だけ。
大和が追ってこない事を確認してほっとして…
同時にちょっとショックで…
性懲りもなく、部室にいる大和を想う。
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