間違いからはじまる
本編
ありえない。ありえない。ありえない。
どうして私の隣にこの男が寝ているのだろう。
さらにありえない事にお互い全裸だ。
この状況を見るからにきっと…いや絶対そうなってしまったのだろう。
ベッドでわなわなと震えてしまった。が、しかし、いつまでもここにこうして居るわけにはいかない。
逃げなきゃ、と私の中で警笛が鳴る。
私のお腹に回された腕を静かに取り払い、脱ぎ散らかした服を持ちバスルームに向かった。
早く!早く!逃げなければ。
ものの数分で着替えを済ませ静かに扉を開けて鞄を持ち玄関へ向かった。
これで逃げられる。そう思ったのに…。
「おい。どこ行くんだよ」
その声に反応してビクッと体が固まってしまう。怖くて振り返る事も出来ない。
「片瀬。聞こえてんのか?」
「ゴメン。とにかく帰るわ」
都築(つづき)の方を見もせず片手を上げ、ダッシュでパンプスを履き玄関を飛び出した。
後方でアイツが何か言ってたようだが構ってなどいられない。早く出社して亜美に昨日の経緯を聞かなければ。
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