純粋な恋をした
濡れて色が変わった僕の黒いズボンの隣には、僕と同じように濡れて細い足に張り付いている白いレースのスカート。
何故か僕の隣に座っている彼女をちらりと見てみれば、長い睫毛が頬に影を作っていた。
「今日は天気がいい日でよかったね。これならあと数時間で乾きそう。」
「……そ、そうだね。」
彼女が動く度にスモーキーアッシュカラーのストレートヘアーがふわりと揺れる。
たったそれだけなのに酷く甘い香りが鼻を掠めて、心臓がどくりどくりと動く。
初めての感覚に焦りながらも無駄にうるさい心臓の音が隣の彼女に聞こえないように、もし聞こえてしまったら絶対に気持ちが悪い奴だと思われると思った僕はうまく動かない唇を必死に動かし、言葉を紡いだ。
「き、君の名前は?」
「メグ・アルプ。君は?」
「ぼ、くは、ベルティ・セルヴァン=シュレベール。」
「じゃあベティって呼んでいい?」
「も、もちろん。僕は、その、メグって呼んでもいいかな?」
「もちろん。」
グレーの瞳を細めてふわりと笑うメグ。綺麗な顔立ちなのに、笑うと子供のように幼く見える。
そんな些細な事でも彼女の事を知れたと思うと何故か酷く嬉しくなり、もっともっと彼女の事が知りたくなった。
誕生日は?僕は12月だけれど、彼女は何月なんだろう。イメージとしては4月なんだけど。
年齢は?僕よりも少し上に見えるけど、笑うと僕よりも幼く見えるからよくわからない。
どこに住んでいるんだろう。いつもこの公園にいるのかな。好きな食べ物は?僕と同じ読書が趣味だったら嬉しい。
なんてどんどん浮かんでくる質問を口に出しそうになりながらも、またちらりと隣を見てみればグレーの瞳と目が合う。
生まれて17年女の子とまともに会話をしたことがない僕はどうしようもないぐらいの恥ずかしさに襲われ、目をそらしてしまった。
その瞬間に今の今まで隣に座っていたメグだったが、突然立ち上がって僕の隣から離れていく。
ああ、嫌われた。気持ちが悪い、と思われてしまった。
気持ちが悪いと思われるのも言われるのも慣れている筈なのに、心臓が潰されたように痛くて苦しくて、泣きそうになる。
嫌われたくない。メグにだけは嫌われたくない。
そう思い、意を決して顔を上げればそこには少し乾いた白いレースのスカートを風に靡かせ、幼く笑っているメグが居た。
「じゃあ私はそろそろ帰るね。また、また会おう。その時はたくさんお話しようね。」
そういって笑う彼女がどうしようもないぐらいに愛おしくて、ずっと僕だけを見てほしくて。ああ、この気持ちが恋というものなんだと僕は僕からどんどん離れていく彼女を見て思った。
何故か僕の隣に座っている彼女をちらりと見てみれば、長い睫毛が頬に影を作っていた。
「今日は天気がいい日でよかったね。これならあと数時間で乾きそう。」
「……そ、そうだね。」
彼女が動く度にスモーキーアッシュカラーのストレートヘアーがふわりと揺れる。
たったそれだけなのに酷く甘い香りが鼻を掠めて、心臓がどくりどくりと動く。
初めての感覚に焦りながらも無駄にうるさい心臓の音が隣の彼女に聞こえないように、もし聞こえてしまったら絶対に気持ちが悪い奴だと思われると思った僕はうまく動かない唇を必死に動かし、言葉を紡いだ。
「き、君の名前は?」
「メグ・アルプ。君は?」
「ぼ、くは、ベルティ・セルヴァン=シュレベール。」
「じゃあベティって呼んでいい?」
「も、もちろん。僕は、その、メグって呼んでもいいかな?」
「もちろん。」
グレーの瞳を細めてふわりと笑うメグ。綺麗な顔立ちなのに、笑うと子供のように幼く見える。
そんな些細な事でも彼女の事を知れたと思うと何故か酷く嬉しくなり、もっともっと彼女の事が知りたくなった。
誕生日は?僕は12月だけれど、彼女は何月なんだろう。イメージとしては4月なんだけど。
年齢は?僕よりも少し上に見えるけど、笑うと僕よりも幼く見えるからよくわからない。
どこに住んでいるんだろう。いつもこの公園にいるのかな。好きな食べ物は?僕と同じ読書が趣味だったら嬉しい。
なんてどんどん浮かんでくる質問を口に出しそうになりながらも、またちらりと隣を見てみればグレーの瞳と目が合う。
生まれて17年女の子とまともに会話をしたことがない僕はどうしようもないぐらいの恥ずかしさに襲われ、目をそらしてしまった。
その瞬間に今の今まで隣に座っていたメグだったが、突然立ち上がって僕の隣から離れていく。
ああ、嫌われた。気持ちが悪い、と思われてしまった。
気持ちが悪いと思われるのも言われるのも慣れている筈なのに、心臓が潰されたように痛くて苦しくて、泣きそうになる。
嫌われたくない。メグにだけは嫌われたくない。
そう思い、意を決して顔を上げればそこには少し乾いた白いレースのスカートを風に靡かせ、幼く笑っているメグが居た。
「じゃあ私はそろそろ帰るね。また、また会おう。その時はたくさんお話しようね。」
そういって笑う彼女がどうしようもないぐらいに愛おしくて、ずっと僕だけを見てほしくて。ああ、この気持ちが恋というものなんだと僕は僕からどんどん離れていく彼女を見て思った。