アイツ限定
嫌でも耳に入ってくる。
「お前、結構モテるんだな。」
隣で村上が耳打ちしてくる。
「それは、そっちもだろ。」
あたしはぼそっと独り言のように言う。
「あ、俺ここだから。あ、お前明日の帰り、空けとけ。わかったな。」
そういって、村上は、自分の掃除場所へ向かった。
そうだ。
あたしと村上付き合ってるんだ。
自覚……しないとな。
あたしは、そう思いながら用具庫からモップを取り出して、体育館をモップ掛けする。
千夏の話ってなんだろう。
もしかして、村上を好きとかあたしに言って来るんじゃ……。
もし、千夏がアポロンならそれはありうる。
だけど、それって悪いことなのだろうか。
千夏が誰を好きになろうと、あたしはそれをとやかく言う権利はないわけで。
それは千夏の恋する自由であって。
そう思ったら、アポロンだってそうだ。
イオに許嫁がいようが、それは、アポロンがイオを好きになってはいけないということにはならない。
イオが決めること。