アイツ限定
桜も葉桜へと衣替えをし、新学年を迎えてもうすでに1か月が過ぎようとしていた。
なのに、いまだに席着替えをしない2年3組。
担任の宮(ミヤ)ちゃんこと宮内智香(ミヤウチ トモカ)が、提出物を全員そろって出すまでしないって言い張っているからだ。
そんなこと言ってたら永遠にこの席にの様な気がする。
だって、あたしのお隣さんは、出す気はさらさらないようなのだから。
課題を出さない常連になっている。
「え~……。このxはこのαとイコールなので、こういう式になります。そして、このβはこのyとイコールとなります。以上から……」
ただ今5限目の数学の授業。
そのため、あたし以外ほとんど夢の中。
いびきさえかいている奴もいる。
千夏は、必死に起きているようだが、明日香はもう机に顔を伏せて爆睡のよう。
隣の小池も、もう既に夢の中のよう。
だけど……
「……なにお前きょろきょろしてんの」
隣のこいつは寝る気なし。
ってか……
「話しかけんな、くそのっぽ」
あたしは村上を一瞬睨んで再びせわしなくペンを動かす。
だけど、村上は持っていたペンを置き、顔をこちらに向けてくるのがわかった。
「あのさ、俺お前になんかした?」
あー……もう。
話しかけてくんなよ。