アイツ限定
「千夏は間違ってない。悪いのは男なんだよ。だって、見かけだけで、判断するんだもん。絶対に、千夏は料理も、ピアノも、勉強も、劣ってない。
なのに、男は千夏よりも遥かに可愛くて、きれいな子を選ぶんだよ。」
「ちゃんと、千夏の内面見てくれるひとが、必ず現れるから。あたしが、保証する。」
そう言って、あたしは、千夏の頭を優しく撫でた。
千夏は、下を向いて、すすり泣いていた。
まるで、少し前のあたしのよう。
男が、信じられなくて、自分を固く守ってしまう。
ガードを無理に張ってしまう。
「苦しかったね。」
あたしは、そう言って、千夏の背中をさすった。
「……マリ……ごめん……。」
嗚咽を漏らしながらも、謝ってきた千夏。
あたしは、只、うんと言って、千夏の頭を二回ほどポンポンと叩いた。
「あたしは大丈夫。ほら、元気だしな。」
そういって、あたしは千夏を支えながらゆっくりと歩き出した。
もう、周りは暗くなってきていた。
駅まで千夏を送るか……。
そんなことを考えながら、あたしたちは暗くなる夜道を歩いた。