アイツ限定
「そうか…ふふっ…そっか。そうなんだ。
千夏にそのあだ名つけた奴、かなりの物知りだと思わない?普通思いつきもしないでしょ?そんな菫の花言葉の由来なんてさ。
でも、千夏はさ、アポロンの気持ちわかるよ。イオを本当に好きだったから、きっと周りが見えなくなっちゃったんだよ。
……千夏とおんなじだね。千夏はね中学の後半は、美男美女のカップル潰しをしてたの。本当に、別れさせるのは簡単だった。
だって、その彼女のブサイクな写真を彼氏の見えるところに置いとけば、別れたし。それでだめなら、ちょっと彼女をいじめたら、すぐに別れたよ。
本当に好きなのかなって思ったよ…。
千夏も千夏だけどね。」
そう、自分の過去を包みかくず話した千夏の顔はとても悲しそうだった。
「でも、もうそんなことしないんでしょ?」
あたしは優しく言葉をかける。
「うん。今日やっと目が覚めたよ。マリのお陰でっ!」
「そっか…。よかっ「あっれぇ~…かわいい子発見っ!」」
あたしが話している途中で誰かが口をはさんだ。
女にしては声が低すぎる。
千夏もびっくりして顔を上げる。
「おうおう。制服着てるってことは女子高校生かぁ~…。ちょっとお兄さんたちと楽しいことしようぜ。」
駅の出入り口には、4人の若い男性が立っていた。
多分、年齢は20代中盤。
格好は私服で、少し酒臭い。
ってことは、こいつらはかなり酔っぱらっている。
足元もふらついているようだった。