アイツ限定
「お前、家こっち方向?」
村上はそういってあたしの帰り道を指差す。
「あんたに関係ねぇだろ」
「俺もこっちだから、1人寂しいだろ?」
「あんたと一緒に帰りたくない。これ以上関わって来んなよ、ウザい」
あたしはそういって、再びイヤフォンを片耳に入れると、ちょうどそこへ後ろから車がやってきた。
ここの道路は車が2台やっと通れるくらいの狭い道路。
だからあたしは素早く道端による。
村上もより、あたしと村上の距離が一気に縮まる。
早く車通り過ぎろよ。
そう心の中で叫ぶ。
だけど、あたしの心の叫びとは裏腹に、あたしたちに近づくにつれて遅くなる車。
そして、なぜか、あたしたち2人の前で車が止まり、助手席の窓がゆっくりと開く。
「おう、マリ!久々じゃねぇか。相変わらず綺麗だな。隣のやつは新しい彼氏か?」
そこには、あたしがこの世で1番見たくないやつの顔があった。
軽くはねた短髪に、あごに少し生えた髭。
程よく焼けた小麦色の肌を持つこの男性。