アイツ限定
アイツ限定
春の風が心地いい。
あたしは、サングラスと帽子をかぶり、とあるカフェのベランダでランチをしていた。
「ねぇ、あの人さ、モデルのMARIに似てない?」
「えー?似てるけどさぁ…まさかこんなところにいるはずないじゃん。」
「MARIって確か、あの世界で活躍しているバスケット選手の村上と結婚したんだったっけ?」
「そうそう、美男美女でお似合いって感じだよね。あーあたしもあんなイケメン捕まえたーい!」
…あたしそのMARIなんだけどな。
高校を卒業して早5年の月日が流れた。
あの頃の、バスケ部は、あれから頑張って頑張って、やっとの思いで、あたしたちの代に全国に出場を果たした。
まぁ、全国での結果はボロボロだったんだけどね。
あれから、雅人は星南の正式外部コーチとして、働いている。
本当にあたしには感謝してほしい。
あたしはというと、あれから、髪もかなり延びて、今ではポニーテールできるほど。
そして、MARIという名で、今はこれでも一流モデル。
よし…そろそろ、アイツも帰ってくるころだし、帰ろうかな…。
あたしは、ゆっくりと席を立って、ヒールをこつこつと鳴らして店を出た。
もう、空はオレンジ色。
今日は久々のオフで、1人で買い物をしてた。
片手には大きな買い物袋。
これがまた結構重い。
あ…。アイツ呼べばよかった…。
どうせ、午前中で試合終わって、そこらへんぶらぶらしてるって言ってたし…。
「はぁ…」
歩きながらため息が漏れるあたし。