アイツ限定
あんた限定
「…ってこと…。まぁ、俺が悪いんだ…。マリのことわかっただろ?」
いつまにか運ばれてきた料理をおいしそうに食べながら雅人さんは淡々と話し終えた。
俺はというと、ただただ、ウーロン茶を飲んでいた。
もう俺の目の前の照り焼きチキンは冷たくなってしまっている。
「結局は松木のこと好きだったんすか?」
俺はゆっくりと、フォークとナイフを手に取ると、一口サイズにチキンをきっていく。
「最初はすっげぇ自分のものにしたいって思ったんだけど…時間が経つにつれて、多分俺、冷めちゃってたのかもなぁ~…。それか刺激がほしかったのかもな。」
「刺激?」
「ああ、好きな奴も特にできない。手に入れようとすれば手に入れられる周りの女。だから、なんか、男嫌いのマリを惚れさせるっていう…刺激。しかも、超美少女だしなっ!」
そういってこの人は無邪気に笑う。
「最低っすね。」
俺は、フォークとナイフをカタンと置いて、学生かばんを持って財布から自分の食事代をテーブルの上に無動作に置いた。
雅人さんは、びっくりした顔で俺のことを見ていた。
「…俺これで帰りますから。もう、一生会わないことを期待します。」
そういって、俺は足早にファミレスを出た。
後ろからは、「ちょっと待てよ」なんて声が聞こえてくるけどそんなの無視。
春の夜風が俺の背中を強く押した。
あたりはもう暗い。
今日の夜空はなんだか素直に俺の目に飛び込んできた。