アイツ限定
ほとんど埋まったあたしの周りの席。
残すは……
あたしの隣。
「PGの松木か。よろしく」
あたしにしか聞こえないように、ぽつっとつぶやく。
そして、あたしの隣の席にカバンを置き、その席に座る。
……何がよろしくだよ、気軽に話しかけるなこの背高のっぽ。
あたしは、聞かなかったふりをして、カバンの中から携帯を取り出して、適当にいじりだす。
これ以上あたしにかかわって来るなアピール。
「なぁ、お前さ。男嫌いなんだって?」
村上は、あたしにしか聞こえないような声で、しかも、顔は正面のまま、あたしに見向きもしないであたしに喋りかける。
無表情で。
「……」
……無視。
あたしは、イヤフォンをカバンから取出し、それを耳に突っ込む。
そして、ガンガンに音楽をかける。
これ以上話しかけてくんなアピール第2弾。
しかし、村上はその長い手で、あたしのイヤフォンをつかみ、あたしの耳からイヤフォンを外した。
そして、イヤフォンと携帯をあたしから取り上げた。
こいつ、なにしてくんだよ。
「質問に答えろ」
再び囁くように質問してくる村上。
だけど、こいつ、表情一つ変えやしない。
ロボットかって思うくらいに。