アイツ限定
もう父さんに逆らってはいけない。
もう…バスケ以外考えてはいけない。
俺は父さんの大切な”駒”なんだ。
____ピピピッ…ピピピッ…ピピピピピピピピピピピ…
「…ぅ…っ……!
ん…ゆ、夢か…」
俺はゆっくりと上体を起こして目覚ましを止める。
そして、ぐっと思いっきり背伸びをして体をひねる。
「…っく…!またか…」
最近よく見る親父の夢。
もう、思い出したくもない。
俺にとっての最大の悪夢。
「聖也っ!朝ごはんで来たから早く食べちゃってー!」
1階から母さんが俺を呼んでるのがわかる。
俺は、寝癖のついた髪を手で押さえながら階段を降りる。
リビングには既に、妹の夢花(ユカ)が席について朝食を食っていた。
「あ、兄ちゃん寝坊だ寝坊っ!」
夢花は俺を見るなり、にこっと笑ってワーワー騒いでくる。
親父の教育を受けなかった5歳の夢花は素直にここまで育った。