アイツ限定


村上は器用に、くるくるとあたしのイヤフォンを丸めてコンパクトにきゅっと結ぶ。


顔は相変わらず正面のまま。あたしの顔を見てくることはない。



「……っ!」


黙るあたし。

答えたくもない。

男となんてしゃべりたくもない。






吐き気がする。



「答えないと、携帯とイヤフォン返さねぇ」



意地悪そうにいってくる村上。


本当にこいつは……っ!



「……ぁ…ぃ…てぃ…っ!」



あたしはこいつの前で初めて口を開く。



「聞こえねぇ」



いたぶるようにいってくる村上。


何が聞こえねぇだよ。

何様なんだよお前は。

じゃぁ、聞こえるように言ってやるよ。



「……最低っつってんだよ、この背高のっぽっ!」



あたしは、席を立ち、大声で村上にそう叫ぶと、携帯とイヤフォンを取り返そうと、身を村上の方へ乗り出す。


しかし、あっけなく、村上にかわされるあたし。


クラスメイトは、なんだなんだって、あたしたちの周りに群がる。



「PGが暴言吐くとか、人気下がるぞ?」



余裕そうに言ってくる村上。

PGとか関係ねぇし。


< 7 / 199 >

この作品をシェア

pagetop