アイツ限定
圭吾は、一緒にバスケやってなくて、だけど家が近いから、一緒に帰ることもしばしばあった。
だけど、圭吾が俺から笑顔が消えてるって気づいたころには遅かった。
俺は完全に笑えなくなってしまった。
そうわかった瞬間、こいつ、ものすごい勢いで俺の親父のところに飛び込んでいったんだっけ。
圭吾ん家の両親が止めに入らなかったら、かなりの問題になっていたと思う。
そのあとに、圭吾は泣きながら俺の前で謝ってきた。
__俺、幼馴染なのに…お前がこんなんになるまで気づかなくてごめんな。俺、幼馴染失格だな…
そういってくれるだけで俺は嬉しかったのを覚えている。
それからというもの、圭吾は登下校中、必死に俺を笑わせようと、お笑いを勉強して俺の前で披露していたけど、俺は全く笑えなかった。
ただ、圭吾のお笑いセンスが格段に磨かれただけだった。
今でも俺は思う。
「笑顔って…なんなんだろうな。」
笑う顔と書いて笑顔。
そんな笑顔を全否定したうちの親父。
俺の笑顔を取り戻すといった圭吾と松木。
別に、笑えなくなったからと言って、困ったことはなかった。
笑顔って…必要なのかって…
「何言ってんだお前。」
圭吾が、俺の隣で歩きながら、俺のことをバカにしている目で見てきた。
そして、はぁ…とため息をついて、圭吾は再び語りだした。
「お前なぁ。笑顔って人間にしかできねぇんだぞ。人を幸せにする最大の武器だろうが。」
人を幸せにする…最大の武器…か。
「ふーん。たまにはいいこというじゃねぇか。」
そういって、俺は圭吾の肩をポンと叩いた。