アイツ限定
顔は良く見えない。
だけど、松木だってすぐにわかった。
どれだけ見て来たと思って。
これくらいの距離ならしぐさだけでわかる。
「お前、よくわかったな。」
「ああ、あの車のフロントガラスにちょうど反射して見えたんだよ。もしかしてと思って振り返ったらビンゴっ!じゃ、俺先行くわ。」
そういって、圭吾は少しニヤッと笑ってから、駆け足でその場を去っていった。
あいつ、人一倍目いいからな。
見ええ当たり前っちゃ、当たり前か。
向こうからゆっくりと歩いてくる松木は俺が校門にいることには気づいていないようだった。
距離は多分150mあるかないかくらい。
俺は、校門のところに寄りかかって、マリを待つことにした。
「あ…村上君…どうしたの?」
ある一人の女の子が、俺に話しかけてきた。
少し天然パーマの入った可愛い系の女の子。
…こいつ、どっかで見たような…
あ、松木の隣の席の奴。
確か名前は…
「あ、私東出千夏です。」
そういって、東出はニコッと可愛らしく笑った。
多分、俺が少し口ごもったから、察して言ってくれたんだと思う。