アイツ限定
「もう~…。いいじゃん聞かせてよ。親友でしょ?」
朝の登校から明日香が隣でうるさい。
どうやら、昨日のことを聞き出したいようだった。
屋上の後、あたしと村上は、2限目の始まるギリギリに教室へと戻った。
クラスのみんなからは、変な目で見られた。
そりゃーそうだ。
丸々50分間2人っきりでいたことがばれてるんだから。
明日香が、世界史の先生を上手くごまかしてくれたらしい。
その分には、感謝している。
だけどやはり、自分の口から言うのは恥ずかしい。
「どうなの?好きなの?」
カーッと明日香の言葉で顔が赤くなるのが自分でもわかった。
明日香がニタニタしながら、あたしの顔を覗き込んで来ようとしてきている。
「あいつは…初恋の…男の子だった。」
あたしはうつむきながら、小さくぼそっと言う。
明日香は、一度上を向いて記憶をたどっているようなそぶりを見せたと思ったら、いきなり「あっ!」と大きく目を見開いた。
「あの、マリがバスケを始める切っ掛けになった男の子?」
明日香は、目を見開いたまま、あたしを指差して、そうでしょ?と目で訴えてくる。
いやいや、そんな自信たっぷりに言わなくても。