アイツ限定


あたしは、自分の席に座り、カバンの中へ無動作に携帯をつっこんだ。



「あたし、あんたみたいな奴、大っ嫌いだから」



あたしは、低い声でそんな言葉を吐き出した。



「……ああ、そう」



お互いの顔を見向きもしないで、低い声で会話する異様な光景。

隣の千夏は、どうしようどうしようって困惑しているのがわかる。

そうなっても仕方ないのはわかってる。


だって普通は、こんな容姿完璧な奴に話しかけられたら女子は「キャーっ」とかいってはしゃぐに決まってる。

それほどじゃなくても、きっとあたしみたいにさけたりはしないはず。


だけど、それはみんなわかってないんだ。

表面上ニコニコして、頼りになって、容姿が良ければ、女子は簡単にその男にとびつく。

イケメン嫌いな女子なんて、そんなのめったにいないから。

だけど、光があったら影があるように、男にも表があれば必ず裏がある。

その裏はきっと、自分のことしか考えてないんだ。

相手のことなんて、考えるはずもない。

所詮女は男にとって、都合のいい道具としか思われてないんだ。



そう……皆そう。


もう、あたしは騙されない。



そう決めたんだから。














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