あの日のナミダ
暫くそいつを見てた。
普段の俺なら遠慮なく、ベンチから蹴り落とすくらいはしたけど、何となくそんな気にはならなかった。
でも、このままで良いわけないし、起こす事にした。
「おい?起きろ。」
揺すりながらそう声をかけると、そいつは目をパチパチしながら、ゆっくりと起き上がった。
ハッキリ目が覚めてから顔を見ると、瞳もかなり大きくて漆黒の瞳だった。
俺の存在に驚いてたけど、それは俺の容姿とか、族の総長で有名だからとかではなかったみたいで、怖がってる様子も、俺の周りに群がる女共のようなキャピキャピと態度変えるような事もなかった。