君への一歩
ガヤガヤ...
美術室を出たら、どこの部活も部活動勧誘に忙しそうにしている。
「はぁ~...天霧って本当になんであーなんだろ...」
隼仁の顔が一瞬浮かぶが、すぐに頭を振って消し去った。
「今は天霧より、部活の勧誘頑張んなきゃまた怒られるし、頑張ろ!!」
遥香ははりきりながら、『美術部』という看板を掲げながら廊下をスキップで歩く。
(そういえば...あの子ちゃんと学校つけたかなぁ...?)
ふと、今朝会った少年を思い出す。
(すごい可愛い顔してたなぁ...)
何故か運命の出会いのようなものを初めて体験した遥香は、少し落ち着かない気持ちになった。
「...また...会えたりして...」
そんな事を口にし、ヘラヘラと笑っていると...
「あっ...」
これは運命だろうか?
先程会った少年が職員室から出て来ており、遥香が口を開くよりも前に、その少年が口を開いた。
「朝の...」
「あーーーー!朝の男の子!!」
そう叫び、遥香は少年の前まで駆けつけ、目の前に思いっきり美術部の看板をつき出した。
「美術部!!入りませんか?!」
「えっ...と...」
少年は少し戸惑いつつ、あたふたしながらも口を開いた。
「あの...」
「美術部楽しいから入らないと損だよーー!!」
遥香がキラキラ瞳を輝かせながら、少年にいい迫っていると、後ろから声がした。
「ちょっと!遥香!新入生いじめないの!」
駆けつけて来たその女生徒は、言葉と共に、軽いげんこつを遥香にした。
「痛っ!!やめてよ京ちゃん...」
この遥香にげんこつをしている少女は、
『桜 京(さくらきょう)』。長身で、とても美人。遥香のお世話役をしているような者だ。隼仁と同じく遥香のクラスメイト。
すると、京はちらっと自分と遥香の前に立っている少年を見て、にこっと笑い、謝る。
「ごめんね、君!大丈夫?この怖い先輩どっかやるから、美術部の事、少しでもいいから考えといてくれる?」
「ぁ...はぁ...」
気のない返事だが、京は笑顔で聞き取ったかのように、満足気に大きく頷き遥香の耳を引っ張って去っていった。
(なんなんだあのうるさい先輩...すごい面倒臭そう...)
そんな事を考えながら、少年、和哉も教室に戻っていった。
そしてその後、遥香は部員、隼仁達にみっちり説教をされたのであった。