異世界ハーフのお姫様
「…凄いな。俺は人間と『ヴァンパイア』のハーフなんだ」
「…そうなの?あたしは人間の血なんて一滴も流れてないわ。だから嗅覚の良いオオカミ少年にバレることも多いわ」
「…オオカミにか?それは災難だな。でもオオカミは火が苦手だろ?」
「…そんなのデマよ。氷漬けにされるほうが無理なのよ」
「へぇ」
「…嶺雨、こんなところで何をしてるの」
あたしはこの感覚を知ってる。
冷気が少し流れ込んでくる感じ。
「…雨雅、この人も『異人』よ」
あたしは振り向きながら、雨雅に微笑んだ。
「…そうなのか?」
そこには…氷の鍵を持った雨雅が、疑わしく鼓君を見てる。
「…そうだよ。ヴァンパイアや」
「…なるほど。ヴァンパイアのハーフか」
「…雨雅、また氷でピッキングしたでしょう。冷気をあまり出さないで」
「…しょうがねぇじゃん。『雨氷』の血が入っていたとしても俺は『火陽』の血が多いんだから」
拗ねた様に口を尖らせる雨雅。
あたしは呆れて笑いながら、雨雅をギュッと抱き締めた。
あたしは体温が随分と低い。
雨雅は人間程度には温かい。
「…いつも通り、暖かいわね」
「…お前ら、姉弟だよな?仲良いな」
ニカッと笑う鼓君。
あたしはドアが開いていて、そこから誰かが覗いてたことなど全く気付かなかった。
「へぇ…『異人』だったか」
その人はそう呟いて、鼻歌を歌いながら姿を消した。
その人のせいで、悪夢に巻き込まれることになる。