異世界ハーフのお姫様
「…俺さ?ヴァンパイアなのに周りの人の血を吸うのが、どうしても出来なかったんだ」
「…そーなの?それって餓死しちゃうんじゃ…」
「まぁ、あの時は餓死しかけててんだよ。両親からも見放されてて…」
鼓君は懐かしそうに目を細めた。
「…でも、その時に異世界で嶺雨に会ったんだ。そして…血をくれたんだよ」
「血を?」
そんなことあったかしら?
「…普通の異人や著人とかは、血を与えたりしないのに…その子は、震えながらも首筋差し出してくれたんだ」
……あたしは異世界生まれ。
「…全く覚えてないよ?」
「きっと、羽園との記憶と一緒にぶっ飛んだんだよ」
フッと笑みを漏らす鼓君。
「…そーかもしれない」
あたしは笑みを向けて、静かに目を閉じた。
脳裏に過った『砂時計』。
「ど、どうしよう!せっかく羽園君から貰った『砂時計』学校に置いて来ちゃった!」
あたしは羽園君の腕の中でモゾモゾと動く。
「いーよ。あれくらいの『砂時計』ならいくらでも創れるよ」
羽園君はあたしのおでこにデコピンをしてきた。
あたしは無言で静かになる。
「…あれね?お気に入りだったの。思い出せないけど…あれ、あたしが大事にしていた失くした『砂時計』に似てるんだ」
あたしは小さい頃から『砂時計』を大事にしていた。
どこへ行くにも持ち歩いていて…。
でも、いつしかなくしてしまったんだ。
「その時は悲しみに暮れて…自分の部屋を氷漬けにしてしたって…お母さんからは聞いたよ」
「…………………そんなに大事だったの?」
羽園君は疑わしそうな目であたしを見てくる。
「…うん。凄い好きだった。シンプルな感じだったんだ。砂の色がね?…水色だった」
「っ…!」
あたしが言い終わると、羽園君は気まずそうにする。
「そんなに大事にしてたんだな。部屋を氷漬けにするとか…」
鼓君はクスクス笑う。
「…綺麗だったんだもん!あたしがね?泣きたくなっちゃう時にね?…色が変わるの」
「っ…」
「…泣きそうになるとね黄色になるんだよ?笑顔になると…虹色になった」