異世界ハーフのお姫様
彼の正体は…
あたしは…砂が治まっても尚、驚きで声も出せない。
そうだ。
「…………羽園君」
「一日振りだね、嶺雨」
あたしに寂しそうな笑みを向ける羽園君。
そうだった。
ココの裁判家は…………、羽園家が支配していたんだった。
「……始めよう。星降る夜に…」
羽園君は微笑を浮かべて、一番偉い席に座る。
「……まず、零沢嶺雨姫君が何故、未来を張り替えたかの理由を教えよう」
え?
あたしが言うんじゃ……。
「…零沢嶺雨姫君は、弟である零沢雨雅王子を助けようとした為である」
羽園君は淡々と語る。
「…しかし、零沢嶺雨姫君がワールツに君臨する姫君であっても…未来を張り替えはイケ無いのでは?」
沢纚大臣は気難しそうな顔をする。
「……黙れ、沢纚。俺が話しているんだ」
ココで一番偉いのは…羽園君、アナタなんでしょう?
沢纚大臣は、キュッと口を結ぶ。
複雑そうな顔をしている。
羽園君はさも当然かの様に沢纚大臣を黙らせる。
「…話を戻そう。嶺雨姫君は人間界で未来を張り替えてはいけない。でも…命が関わりますよね?…それでも張り替えてはいけないと言うのですか?」
羽園君は大臣たちに語りかける。
沢纚大臣以外は、羽園君の代弁を聴いてあたしを眺めている。
「…もう、家族を亡くしたくは…ありません」
あたしは、いつの間にか呟いていた。
ドヤッとざわめき出した会場。
コレも中継されている。
視聴席がざわめきだす。
「そーだ、そーだ!嶺雨姫君はいけないコトなどしておらん!」
「嶺雨姫君は良い人よ!私に笑顔をくれた人だもの!」
「この国を立て直してくれたのは、紛れもなく嶺雨姫君です!」
あたしが振り向くと…、裁判官たちに野次を飛ばしている。
涙が溢れ出る。
あたしは10年間も人間界にいたのに…こんなに皆は待っていてくれてんだ。
ごめんなさい。
「…静かにして下さい」
羽園君の声が、視聴席や、大臣たちを静かにさせた。
あたしは羽園君を見つめると、柔らかい笑みが返って来た。
「…僕は、有罪とは一言も言っていない。僕は嶺雨姫君が大変な思いをして弟を守り通していることを知っている」
「「っ!?」」
大臣たちは口をへの字に結んでいる。
「…僕は、彼女がどんなに頑張っていても…異人の一人として全てが完璧な訳が無い。今回は命を守る為として…罪はなく、無罪とする」
羽園君の「無罪」の言葉を聞いていた視聴席の異人たちから歓声が上がる。
「…罪はなく、無罪とする。報道陣、早く皆に伝えてください」
羽園君は笑顔で言い切った。
涙が絶え間無く頬を濡らす。
「皆さん、ありがとうございます」
視聴席や報道陣に頭を下げる。
するとドッとどよめき出した。
「顔を上げて下さい!大変な思いをしているのは我々国民は知っています!」
そーだよ、と沢山の人が色んな言葉をかけてくれる。
「…嶺雨姫君。さぁ、戻りましょう。一度人間界に帰りましょう」
いつの間にか、隣にいた羽園君。
驚きで涙が止まる。
「…羽園君、裁判家だったんだね」
「…うん。黙っててごめん」